北陸新幹線敦賀開通後の特急サンダーバード問題

2015年に金沢まで開業した北陸新幹線は、2020年には福井延伸、2023年には敦賀延伸と進む計画となっています。 これにより、大阪や名古屋から北陸方面に向かう特急列車と北陸新幹線との接続駅も、現在の金沢から福井・敦賀へと西に移り変わっていきます。 しかし北陸新幹線の整備計画では、この敦賀延伸の後にある大阪延伸は、ルートが小浜京都経由で決定したものの、新大阪(京都)への開通は2046年となっており、23年間もの間は敦賀がこの新幹線と特急の接続駅としての役割を担うことになります。 この敦賀駅における北陸新幹線と特急サンダーバード・特急しらざぎの接続に関しては、2つの大きな問題を残したまま四半世紀近くの期間を運用していく必要が出ています。 1.直通がないことで北陸圏が関東を向いてしまう 2.敦賀駅の新幹線と在来線のホームが離れている <1つめの問題 「直通運転が途絶える」> 従来の計画では、北陸新幹線の敦賀開業によって在来線が第三セクターに切り離されることで、JR西日本が大阪と北陸方面を結んでいる特急サンダーバードの直通運転を継続させるために、 フリーゲージトレインを導入することになっていました。 このフリーゲージトレインは、大阪から湖西線経由で敦賀までの在来線区間の狭軌を特急列車として運行し、敦賀からは新幹線の標準軌を走行することを前提に、 福井延伸のすぐ後に敦賀へ部分延伸する計画としており、北陸の利用者にとって不便になることがないよう引き続き乗り換えをしなくても京阪神方面と移動できるようにすることの確約を持って沿線自治体からの了承を得ていました。 しかし、九州で行っていた国によるフリーゲージトレインの開発を、技術的な課題やコストの問題により打ち切ってしまったたことで、この影響が同様の仕組みの導入を予定していた北陸地区でも出てしまうことになりました。 九州(長崎)新幹線における研究開発と比較して、積雪や低温の面でより自然環境が厳しい北陸では、この開発打ち切りにより事実上不可能となり、JR西日本では独自の開発もしていましたが、再開した場合でも2023年の敦賀開業には到底間に合わないことになります。 JR西日本では、フリーゲージトレインの導入を見越した車両更新計画もあり、1990年代後半から製造された特急サンダーバードの681系は20年が経過して徐々に更新期を迎えていくことになるので、 北陸方面の特急車両をフリーゲージ方式にするのか、在来線のままの更新とするのかの判断が下されることになります。 このことは、名古屋と北陸を結ぶ特急しらさぎも同型の車両で運行しているため、JR東海の車両更新計画にも影響が出ることになってしまいます。 特に特急しらさぎでは米原発着の列車があるため、敦賀延伸によって米原敦賀間という短い区間の特急列車の必要性問題も発生するため、車両更新だけでなく輸送体系自体の変更にも関わることとなります。 また、北陸新幹線自体の計画を、敦賀延伸と比較して直通の影響の少ない福井延伸のみに留めた場合、在来線特急の行き先が敦賀になるのか福井になるのかの違いには、交直流電車の必要性の有無にも影響するので、 北陸新幹線やフリーゲージトレインの計画判断が遅れてしまった場合、681系や683系を座してしばらく使い続けることになってしまいます。 このように、北陸新幹線の敦賀延伸は、これまで1世紀近く続いた関西と北陸を直通する列車が途絶えてしまう可能性もあり、経済的な深い結びつきが弱まってしまう可能性が懸念されています。 北陸新幹線を時間軸で見た場合、北陸と関西が開業する2046年に対して30年も早い2015年に開業した北陸と関東との結びつきが次第に強まってしまい、直通運転が途絶える期間が四半世紀と長い期間を要するため、 関西経済界からは、これまでは長らく京阪神を向いていた北陸経済界が東京を向いてしまうというという危機感を抱いています。 <2つめの問題 「離れたホームでの乗り換え」> 北陸新幹線の敦賀駅は、斜面やトンネルといった敦賀駅周辺の地形の関係で、新幹線と在来線のホームが遠く離れてしまう設計となっており、敦賀駅は新幹線と在来線の乗り換えが不便となる接続駅であることは、あらかじめ把握できていたことでした。 距離にして200メートル、高低差が20メートルあるとされており、重い荷物を持った長距離旅客にとっては大きな負担になることが予想されています。 更に、敦賀から先の延伸は具体化しておらず、小浜・京都・新大阪といった途中区間までの部分延伸の予定がないため、23年後の全線開業までの間を乗り換えが不便な敦賀駅が長期間担うことになってしまっています。 列車の接続は、ダイヤ上の接続だけでなく、乗り換えの移動に要する負担が少ないことも利便性要素に含まれるので、敦賀駅は新幹線と在来線特急の接続駅として致命的な問題を抱えていることになります。 現在検討されている対策案は、端的に行えるものとして、離れているホームをつなぐ通路に動く歩道を設けることや、四半世紀もの期間におよぶことになるので、大規模な設備改善として、 九州新幹線の新八代駅や2018年度から上越新幹線の新潟駅で行われる新幹線と在来線のホームを隣り合わせにするためのループ線による接続案も検討されています。 北陸新幹線の敦賀駅は2面4線とする計画となっているので、開業時におけるダイヤの運行頻度見込みから、1線または2線を在来線とすることも可能となるので、支障は出ないと考えられます。 この新幹線と接続するループ線は、全線開業後は留置線や保守作業車両の移動用に活用することで、臨時的な位置付けではなくのちの先行的な投資としておくとした案が出ています。 しかし問題の本質的な改善策となる所定ホームの位置の見直しに関しては具体的な検討はされていないため、福井県などは大阪とのアクセスが悪くなることを理由に、 整備新幹線の建設や並行在来線運営に掛かる費用負担を拒むような見解も出ており、多くの北陸の沿線自治体は不満を持っています。 <今後の敦賀駅> 北陸新幹線が開通した敦賀駅は、交通拠点としての要衝としてだけでなく、これまで以上に北陸経済圏における地位が向上し、高岡・富山・金沢・福井に続く存在となります。 開発が中断されたフリーゲージトレインの導入が実現した場合には、この敦賀駅がゲージ変更区間を要することになり、 現在の在来線の交直流電源切換えの拠点駅に加えて新幹線時代でも一定の地位を持つことができることになります。 在来線の北陸トンネルと同様に、新幹線でも20キロ近い長大な新北陸トンネルが建設されるため、敦賀駅はこのトンネルの安全上の退避駅としての役割を持つことにもなります。 近年は、日本が戦国時代であった中世期に敦賀の街の発展に寄与した大谷吉継に関しても、関ヶ原の戦いに加担した悪者から、忠義と友情に熱い人望人徳のある名将として見られるようになっており、 自然と歴史文化が豊かな敦賀が注目されることになります。