桂文珍 「不動坊」

旦那が趣味の義太夫を語る会の準備を始めた。飲める人には酒と肴を、飲めない人にはお茶と羊羹を揃えて、座席の用意をさせる。さて当日になって、何人集まるか番頭に聞くと、やれ無尽だお産だと誰も来ない。すっかり臍を曲げた旦那は「もう義太夫は語らない、その代わり長屋の住人は店を空けろ、店の者には暇を出すからみんな出て行け」と。 こりゃ困ったと知恵者が音頭を取って、旦那をなだめにかかる。「どうしても旦那さんの語りを聞きたい」とおだてられ、最初は渋っていた旦那が機嫌を直して会が始まった。 しばらくしたら客は次々と寝てしまった。これに気が付いた旦那は怒り出したが、小僧の定吉が一人だけ泣いている。 「おお、お前さんは義太夫が分かるんだね、どこが悲しかった、馬方三吉子別れかね」  「そんなとこじゃねぇ、あそこだ」「あそこは、私が義太夫を語った床じゃないか」 「わたくしの、あそこが寝床でござんす」 ※『落語400文字ストーリー』より引用 http://mengjian.blog104.fc2.com/ 落語ちゃんねるブログ(データベース)  ⇒ ⇒ http://rakugo-channel.tsuvasa.com/605